こんにちは。
寒い日が続いています。まだ冬は続くようですね。
今日は『介護力』について考えてみようと思います。
介護力という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。在宅療養支援業界では聞かない日・発しない日はないと言ってもよい言葉です。通常は「在宅療養中の患者さんの家族さんの」という前提で語られます。日常的に使うようになったのはやはり介護保険制度が発足してからでしょうか。
「介護力が高い(低い)」とか「大きい(小さい)」とかと表現することが多いと思います。「強い」とか「弱い」とかは言わないですね。
患者さんが在宅療養を行う上で、そしてわれわれが在宅療養を支援するうえで、家族さんの『介護力』は非常に重要な要素です。もちろん介護力が高い(大きい)方がが有難いのは間違いありませんが、必然ではありません。身寄りのない独居の方などは介護力はゼロなわけで、それでも在宅療養支援は十分成立します。
ゼロは構わないのですが、マイナスはちょっと困ったりします。マイナスになるのは、患者さん自身が家族さんを介護しているような状況(認知症の配偶者を介護するがん患者さんなど)や、患者さんが在宅療養することを快く思わない家族さんがいる場合とか、われわれが不信感を抱かれている場合とかです。こちらの努力で何とかなる場合も、どうにもならない場合もあります。
介護力には特に定まった定義もなく、評価するための尺度もありません。完全に固有のものであり、Aさんの家族とBさんの家族の介護力を比較することもできません。患者さんと過ごす時間がどれだけあるかとか、介護行為・家事作業のスキルはどうかとか、健康状態や体力・身体機能はどうかとか、金銭的な問題はどうかとか、様々な要素を考慮し判断しています。
ただ多職種で在宅療養を支援する際、そのスタッフ間では家族さんの介護力に関して共通認識を持つべきである(共通認識を持った方がスムーズに支援できる)と思っています。
そこでもっとも重要なのは、介護力が低い(小さい)と認識されることは劣っていることでもなければ非難されるものではないということです。
たとえば、就労しながら限られた時間を精一杯介護にあてている方などは、本当に頭が下がる思いであり感謝しかありませんが、必然的に自宅にいる時間が短くなるわけであり、介護力としては低いと評価せざるを得ません。
家族さんの介護力を正確に適切に評価しながら、必要な支援をそれぞれの職種が専門的にかつ総合的に、全力で真摯に行うことが我々に課せられた使命なのです。
最後にここだけの話ですが、家族さんの介護力を最も正確に把握しているのは実は患者さん自身です。そしてそれを意識的にあるいは無意識に心に刻みながら貴重な時間を過ごしておられるのです。結果として必ず丸く収まることになるのだと思っています。