正月休みも明け、通常業務が開始されていることと思います。
今日は情報共有の難しさについて考えてみます。
在宅療養支援の現場では多くの異なる職種のスタッフが活動しています。患者さん・利用者さんに質の高い在宅療養生活を送ってもらうためには関与するスタッフ間での情報共有が欠かせません。
通常、それらのスタッフは職種ごとに異なる事業所に属しています。したがって、事業所の枠を超えて患者さん・利用者さんの個人情報を共有することになります。これはなかなか難しいことです。
課題は二つです。
一つ目は、異なる職種のスタッフにどのような情報を提供するか。
二つ目は、どのようにして情報を共有するか。
です。
一つ目の課題に関しては、関与するスタッフ個人があるいは各事業所内で研鑽を重ねるしかありません。結果として、相手がどのような情報を求めているかを常に考える習慣がつきます。大切な患者さん・利用者さんの個人情報をを他事業所に送るわけですから慎重さ・丁寧さも常に求められます。
異なる職種のスタッフから、こちらが必要とする情報を適切なタイミングで送ってもらえると、相手に対する信頼感が増し、連帯感が強まります。こうやって切磋琢磨を繰り返していくのです。
二つ目の課題に関しては、昨今のICTの発展が大きく貢献しています。もちろん即時性を求める状況では電話がもっとも有用であるのは今でも変わりありません。
通常の経過報告に関しては、以前は各事業所それぞれにFAXを送っていましたが、現在では専門職用のSNSが普及し情報共有が効率化しています(もちろんそこには新たな問題も発生していますが)。
病院はどうでしょうか。
病院内でも多くの職種のスタッフが働いているわけですが、通常はすべてのスタッフは同じ事業所(病院)に所属しています。したがって、一つの事業所内で情報共有は完結しており、他事業所と情報を共有するという必要性が(あまり)ないわけです。
結果的に患者さんの診療情報・個人情報は院外には安易に持ち出してはいけない、という方針になります。ICTの発展により電子カルテを利用している病院がほとんどだと思いますが、それらは情報漏洩を防ぐためインターネットには接続しないという取り決めが厳格になされています。
患者さんが入院している間はそれで不都合は発生しないでしょう。問題は患者さんが退院するときです。
退院によって入院医療は完結するわけですが、療養自体が終わるわけではありません。患者さんの人生に目を向けるなら、入院は一時的なイベントに過ぎず、人生はその後も続いていきます。
病院から在宅に患者さんの人生の場面が移行するのですから、入院療養を支援していたスタッフから在宅療養を支援するスタッフに対し情報が提供されなければなりません。病院は一つの事業所ですが、退院後は職種ごとに異なる事業所がかかわるわけであり、理想的には病院からそれぞれの事業所に対しそれぞれの職種向けに情報が提供されるべきです。
残念ながらそのような情報共有はほとんどなされていないのが現状だと思っています。
退院時の適切な情報共有は本当に難しいことです。病院文化と在宅療養支援文化の違いと言ってもよいかもしれません。何十年も前からわれわれはこの問題に直面しており、改善を求めて努力しているつもりですが、文化の違いはいかんともしがたいものがあります。
すっきりしない物言いですみません。決して病院を非難しているわけではありません。