地域緩和ケアについて(再)

こんにちは。

今日は地域緩和ケアということについてもう一度考えてみようと思います。

以前このブログにも書きました(2021.12.8 地域緩和ケアについて)が、僕は地域で緩和ケアについて考えるということにこだわっています。

 

 

緩和ケアはその概念が20世紀の後半に構築され、21世紀になり広く普及しています。現在現役で医療介護業務に就いている方の多くは、緩和ケアはすでに完成したものとして教育課程において学んでこられていますね。まず知識として理解し、それを現場で実践する、ということです。

 

では『在宅緩和ケア』についてはどうでしょうか。

在宅緩和ケアは極めて個別性の高いものです。在宅療養支援の実践の中で感じ、問題意識を持ち、それを解決する際に緩和ケアの概念に当てはめて考える、という手続きを取っているのではないでしょうか。要するに、まず実践ありきなのだと思うのです。

 

欧米の先進的な地域では、緩和ケアはたとえ在宅の場においても専門職・専門チームが提供するものとされています。それに対し日本では、緩和ケアのすそ野を広げるべく、緩和ケア専門ではない医療介護従事者も基礎的な緩和ケアを提供するべきとされています。がん疾患においては、すべてのがん診療従事者を対象にしたPEACEプロジェクトが行われており、受講された方も多いと思います。

そのような緩和ケア非専門職が提供する緩和ケアを一次(プライマリー)緩和ケアと称することがあります。在宅療養支援従事者の多くは緩和ケア専門ではないでしょうから、われわれは一次緩和ケア提供者というわけです。

 

では『在宅緩和ケア』に限定して考えてみるとどうでしょうか。

病院・ホスピスで勤務される緩和ケア専門職の方々は在宅緩和ケアの専門職と言えるでしょうか?

そうではないでしょう。なぜなら在宅緩和ケアは知識だけでは成立しないからです。最初にもお話ししたように日々の実践があって初めて成立するものだからです。(病院で働く皆さんを非難するものではありません。病院と在宅と二足の草鞋を履いて活躍されている方も多くおられますし)

われわれは緩和ケアの専門家ではないけれど、在宅緩和ケアの専門家である、と言ってもいいかもしれませんね(言いすぎでしょうか?)。

 

 

では病院・ホスピスで提供される緩和ケアと在宅緩和ケアは別物なのでしょうか?

ルーツは同一ですが似て非なるものと言えるかもしれません。そして、緩和ケアの評価軸がQOLであるという点から考えると、もしかしたら在宅緩和ケアこそ緩和ケアの本質である、とも言えるかもしれません(さすがにこれは言いすぎでしょうね)。

 

そんなわけで、在宅緩和ケアに誇りをもって邁進していきたいところですが、ここで壁にぶち当たります。在宅緩和ケアと言ってしまうと、個別性が高すぎて共通した会話が成立しないのです。100人の在宅患者さんがいれば、100通りの在宅緩和ケアがあります。僕が提供する在宅緩和ケアと、別のクリニックの医師が提供するものとではいろんな意味で違いがあります。

在宅緩和ケアは患者さん個々のお宅で提供し完結するものだから個別に考えて対処すればいいのかもしれませんが、それでは話が進みません。

 

そこで地域緩和ケアです。

個別に実践されている在宅緩和ケアの根底にある共通した揺るがない、譲れない思い。そんなものを考えてみたいのです。それを地域緩和ケアと呼ぶことで、病院・ホスピスで専門職が提供する(古典的な)緩和ケアとは違う、地域(病院外)で個別に提供している在宅緩和ケアの総体・共通理念のようなものを話題にできるのではないでしょうか。

話題にし検証していくことで質を高めていくことができると思うのです。

在宅療養支援従事者が共通した話題を持つことで、自分たちの癒しを得ることもできると思っています。

 

患者さんのお宅に訪問しケアを終え玄関から外に出たところに、地域緩和ケアがあります。