こんにちは。GWも終わりですね。
当院もいよいよ本格的に動き出す感じです。
前回、看取りについてお話ししました。
『死』というゴールに到達するまでの間をどのように過ごすかが大切だ、とお話ししました。
では、実際どう過ごせば悔いのない(悔いの少ない)時間が送れるのでしょうか。
あたりまえかもしれませんが、特にこうしなければならないというルールはありません。
そこで、あなたの大切な方に「どのくらいの時間が残っているのか」を知る(推測する)ことが、ゴールを迎えるに際し有意義である、と考えられています。
もちろん、未来のことを正確に知ることは誰にもできませんが、ある程度の根拠のある予測は可能です。
聖隷三方原病院の森田先生が、この領域では世界に誇る研究をなさっています。教科書的な著書も多く著されています。
先達の皆さんの研究成果を実際の臨床の場に当てはめる(あるいは当てはめない)のが、われわれ現場の人間の役割です。
「どのくらいの時間が残っているのか」を推測するためには、ご本人の状態を詳しく知る必要があります。
診断は何か、どのような経過をたどってきたか、現在どのような症状があるか、どのようなことができにくくなってきているか、などです。
在宅医療は『通院に困難を感じる人』を対象としていますので、たとえ大きな病気をかかえていても、日常生活動作に特に不自由を感じない方の担当になることは通常ありません。
左の図は、カナダのトロント大学の先生方が発表された有名な論文の図です 1)。
外来通院していたがん患者さんが、亡くなる前6か月間にどのような日常生活動作を送れていたか、を調査したものです。
詳細は述べませんが、青い方のグラフ曲線に注目してみてください。
「最初の4-5か月間は緩やかに低下していたものが、亡くなる前の1か月の間に急激に低下した」
という経過を表しています。
がんの患者さんに限って言えば、亡くなる1か月ほど前までは日常生活動作はまずまずできていたということです。
そして、この間は多くの方は『通院』という行為もできています。
その後、「通院がつらくなってきたから訪問診療を受けよう」というころになると、残念ながら残りの時間は1か月程度であることが多い、ということを意味しています。
われわれ在宅医が進行がんの患者さんの訪問診療を始めて、最期の時までご一緒できたとして、その期間は約1か月程度であることが多い、というのが現実です。
つらく厳しい現実ですが、だからこそこの1か月間を大切に過ごしていただきたいのです。
そして、その間を穏やかに過ごすために、少しでも役に立ちたいと思っています。
つづきはまた次回に。
参考文献:
1) Seow H. et al. Trajectory of Performance Status and Symptom Score for Patients With Cancer During the Last Six Months of Life. J Clin Oncol. 2011; 29: 1151-58